生活習慣病とは

高血圧症

血圧とは心臓から送り出された血液が動脈の内壁を押す力のことで、高血圧症は、正常範囲よりも高い血圧が続く状態をいいます。血管の壁は本来弾力がありますが、血圧が高い状態が続くと血管壁に圧力がかかり、次第に厚く、硬くなります。これが高血圧による動脈硬化です。また、血管に弾力があるうちは、血圧は基準値以下におさまりますが、動脈硬化などで血流が悪くなるとそれを補うために心臓がより強い力で全身に血液を送ることで血圧が上がります。こうした悪循環がおきてしまうのが高血圧症です。

高血圧には、他の疾患や薬剤の副作用が原因で起こる二次性高血圧と、原因のはっきりしない本態性高血圧がありますが、日本人の高血圧症の約90％が本態性高血圧といわれています。本態性高血圧は、遺伝的要因と、塩分のとりすぎ、過度な飲酒、喫煙、運動不足、肥満、精神的なストレスなどの環境的要因とが重なって発症すると考えられています。

高血圧症は自覚症状に乏しくなかなか気づくことができませんが、そのままにしておくと、動脈硬化を生じて心不全や狭心症、心筋梗塞といった心血管病をまねいたり、脳卒中の原因になったりします。症状がなくても放置しておくことは禁物です。まずは、定期的かつ決まった時間に血圧を測定してご自身の血圧を管理しましょう。継続的に行う適度な運動、食生活（減塩など）を中心とした生活習慣の改善が予防と治療に有効です。

高血圧の診断基準（2019年日本高血圧学会）

診察室で下の値をくり返す場合

• 最高血圧が140mmHg以上
• 最低血圧が90mmHg以上

※ご自宅で測る家庭血圧の場合は、診察室よりもそれぞれ5mmHg低い基準となります。
日本高血圧学会では、家庭血圧を基にした治療をお勧めしています。

糖尿病

糖尿病とは、膵臓から分泌されるインスリンの作用が不十分なために、血液中のブドウ糖の濃度（血糖値）が正常範囲を超えて高くなる病気です。糖尿病は4つのタイプに分類され、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、その他特定の機序・疾患によるものがあります。日本人では2型糖尿病が圧倒的に多く、その原因にはインスリンの分泌不足に加え、過食、運動不足、肥満、ストレスなどの生活習慣が関係しているといわれています。

糖尿病は初期症状が乏しく、目立った症状が現れることなく進行することが多い病気です。のどの渇き、多飲（のどが渇くために水分を多く摂る）、多尿（尿の量が増える）、体重減少といった自覚症状が現れたころには、ある程度進行してしまっていることもあります。

さらに、病気が進むと三大合併症と呼ばれる糖尿病網膜症、腎症、神経障害を発症して、末期には失明したり、透析治療が必要になったりすることがあります。また、心不全、心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患などの心血管病を引き起こすリスクが、糖尿病でない方と比べて1.5～3.5倍ほど高くなります。そのため、早いうちから、血糖値をコントロールすることが大切なのです。

糖尿病の診断は、症状の有無、血糖値、ヘモグロビンA1c＊の値を総合的にみて診断していきます。当院では血糖値、ヘモグロビンA1cの迅速検査が可能です。

ヘモグロビンA1c（HbA1c）

血糖値が高くなるとブドウ糖が赤血球の中のヘモグロビンと結合します。これがヘモグロビンA1cと呼ばれるもので、血糖値が高いほどヘモグロビンA1cの値も大きくなります。過去1～2ヶ月間の血糖の状態を示す値で、糖尿病の合併症の進行と深く関係しています。ヘモグロビンA1cが6.5%以上であれば、糖尿病を疑います。

糖尿病を予防、あるいは進行を遅らせるためには、生活習慣を見直すことが大切です。糖尿病の発症を未然に防ぐ1次予防、発症したとしても血糖コントロールを良く保つ2次予防、さらに合併症の発症を回避する3次予防、これらはすべて生活習慣の改善が重要になります。

脂質異常症

脂質異常症とは、血液中の脂質の値が基準値から外れた状態をいいます。「悪玉コレステロール」といわれるLDLコレステロールや、中性脂肪（トリグリセライド）が必要以上に増えたり、あるいは「善玉コレステロール」であるHDLコレステロールが減ったりする病態です。これらの脂質異常はいずれも、動脈硬化の進行と関連します。血液中にLDLコレステロールが増えると、血管の内壁が傷つき沈着してプラークというこぶを作り、血管が硬くなります。これが動脈硬化です。中性脂肪（トリグリセライド）も過剰になると、動脈硬化が進みます。

一方、HDLコレステロールは、色々な臓器で使いきれずに余ったコレステロールを回収し肝臓に戻す働きがあり、動脈硬化を抑える方向に働きます。つまり、動脈硬化の予防や改善にはLDLコレステロールと中性脂肪を減らし、HDLコレステロールを増やすことが大切になります。

脂質異常症の診断基準（2022年日本動脈硬化学会）

• LDLコレステロール 140 mg/dl以上
• 中性脂肪（空腹時） 150 mg/dl以上
• 中性脂肪（随時） 175 mg/dl以上
• HDLコレステロール 40 mg/dl未満
• Non-HDLコレステロール 170 mg/dl以上

脂質異常症の原因は、食生活（肥満・カロリー過多）や過度な飲酒、喫煙、運動不足などです。脂質異常症は、それだけでは特に症状が出ることはありませんが、将来動脈硬化による心血管病のリスクになるため、注意が必要です。

当院では脂質値の迅速検査のほか、CAVI(心臓足首血管指数)検査で動脈の硬さ、血管年齢を調べることができます。

治療はまず、食事と運動の生活習慣の改善からはじめます。薬物は、これらを行っても脂質管理の目標値に達しなかったり、将来心血管病になるリスクが高かったり、すでに心血管病を発症している場合に併用します。

高尿酸血症、痛風

高尿酸血症とは血液中の尿酸が7.0mg/dlを超える状態をいいます。痛風や腎結石、尿路結石の原因になるほか、肥満や高血圧、脂質異常症、糖尿病をいくつか合併することが多い病気です。

血液中の尿酸が高い状態が続くと、尿酸の結晶が関節にたまり炎症が起きてきます。これを痛風といい、足の親指の付け根などに生じやすく、痛風発作はあまりの痛みで足を引きずってしまうこともあります。

痛風発作は炎症・痛み止めなどの薬で、1週間～10日ほどで落ち着きますが、治療を中断してそのまま放っておくと、関節炎による結節（コブのようなもの）ができたり、腎障害や尿路結石のリスクを高めたりします。まずは飲酒過多など、原因となる生活習慣がないかを確認し、改善していくことが大切です。